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種子から育てる山野艸
1 はじめに
山野草栽培を本当の意味で楽しむためには、単に苗を購入したり貰ったりして育てるだ けではなく、種子から育てることが必要かつ重要です。
そもそも花を咲かせる植物は、種子により子孫を増やすとともに、悠久の時を経て今ある姿に進化し続けてきたものです。
自分の目で山野草の一生を見つめることは、悠久の時の流れが詰まった「種子」という名の缶詰を開け放つことにほかありません。
奇跡ともいえる生存競争を生き抜いてきた、山野草達の進化の秘密をあなたも覗いてみ ませんか。
2 種子の入手方法
(1) 山野に自生している山野草から採種する
種の多様性を保つためには必要な方法です。
(2) 栽培されている山野草から採種する
比較的簡単に実行できますが、種類により雑種化して本来の形質を維持できない場合があります。
また、自家受粉して採種した場合などでは遺伝的な多様性が失われたり、弱勢化してしまう場合があります。
(3) 山野草の専門業者から購入する
国内よりも海外に多くの専門業者があります。
海外の愛好会の機関誌には多くの業者の広告が掲されていますので、カタログを請求してみるとよいでしょう。
(4) 山野草愛好団体の種子交換会などに参加して入手する
東京山草会(AGST)、英国王立園芸協会(RHS)、北米ロックガーデン協会(NARGS)、などに入会すれば、会により異なりますが、多くの種類の種子を交換、配布、購入することができます。
3 播種に必要なものは何か
さて、実際に種子を入手したとして播種に必要なものは何でしょうか。
要は種子を蒔くための培養土と容器があればよいわけです。
以下に必要なものを示します。
(1) 鉢 植木鉢(朱泥鉢)、ポリポット、播種箱等
(2) 培養土
1)桐生砂、軽石砂、富士砂等火山性砂礫の混合土の微細粒土(入手しやすいもの)
2)ミズゴケ
3)ピートモス
4)パーライト、バーミキュライト等
5)その他
(3) ラベル・鉛筆 鉛筆で記入できる軟質のプラスチックラベル等
(4) サナ 鉢底の穴をふさぐための網目状のもの
(5) かん水用具 ハス口など柔らかなかん水ができるもの
4 播種の方法
(1) 播種は、種子が手に入ったらすぐ行いましょう。
種類によっては、種子の保存中にその発芽力がどんどん低下してしまうものがあります。
(2) 播種をする場合、もっとも手頃なのはポリポットを用いて一種類ずつ別々に蒔くことです。
大きな箱などに複数の異なる種類を蒔くと、かん水などにより種子が飛ばされたりして混ざってしまうことがありますので注意が必要です。
(3) 山野草の種類により、播種方法を変える必要があります。
ミズバショウやリュウキンカのように水を好む種類はミズゴケに蒔いたり、砂蒔きの場合は腰水をして乾燥を防ぎます。
ツツジやシャクナゲはピートモス主体の用土に蒔くとよく育ちます。
そのほか、多くの種類は細かな砂主体の用土に蒔きますが、大きな種子は覆土をし、細かな種子は覆土をせずに管理します(例外も多くありますので悪しからず)。
(4) 播種した鉢は、雨に当たらない明るい日陰で管理すると良く、かん水はできれば腰水とします。
5 発芽後の管理
(1) 発芽後は、直射日光を好むものは徐々に日に当てる必要があり、日陰を好むものはそのまま管理します。
(2) 発芽後は移植の必要があります。
種類により移植のタイミングは異なりますが、できるだけ早く移植した方が良いでしょう。
移植後は原則として親株と同様の管理とします。
6 種子から育てる楽しみ
(1) 種子親より優れた個体が生じる場合がある。
(2) 斑入りや色変わりなどの珍しい個体が生じる場合がある。
(3) 多くの場合無病の健全な個体が得られる。
(4) 一度に多くの個体を育成できる。
(5) 山野草の一生を見ることができる。
(6) 種の保護に一役買える。
7 種子繁殖入門向きの山野草(ごく一部を抜粋)
(1) オダマキ属(Aquilegia) ヤマオダマキ、カナダオダマキ等
(2) スハマソウ属(Hepatica) オオミスミソウ等(いわゆる雪割草)
(3) ギボウシ属(Hosta) ミズギボウシ、オオバギボウシ等
(4) ホトトギス属(Tricyrtis) ヤマホトトギス、タマガワホトトギス等
(5) ネギ属(Allium) ヤマラッキョウ、シロウマアサツキ等
(6) スミレ属(Viola) スミレ、タチツボスミレ等
(7) ナデシコ属(Dianthus) タカネナデシコ、ハマナデシコ等
(8) テンナンショウ属(Arisaema) ユキモチソウ、ムサシアブミ等
(9) サクラソウ属(Primula) クリンソウ、ユキワリコザクラ等
(10) 木本植物 カエデ属(Acer)、コナラ属(Quercus)、バラ属(Rosa)等
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