<<フラボンの山野草質問箱>> 回答欄
質問6:カタクリ 1999年3月26日受付
杉並区のマンション住まいです。一昨年の秋に購入したカタクリのことです。
蘭用の深い鉢に砂中心の用土で深く植え付けています。
昨春は葉のみで花は見られませんでした。
今春も葉が出てきて3/26現在3枚です。でも花らしい芽は見えません。
今年も花は無理でしょうか。どうしたら咲かせることができるでしょうか。
回答6:
カタクリ(Erythronium japonicum)はユリ科(Liliaceae)に属し、栽培はやや難しい部類に入るかもしれません。
鉢栽培をしている場合には、何年たっても花を咲かせずに じり貧状態になったり、枯らしたりしてしまいがちな植物です。
また、種子繁殖以外にやさしい増殖方法がなく、この点も株の維持を困難にしている一因と思われます。
この仲間は一般にスプリング エフェメラル(春植物とでも言いましょうか)と呼ばれ、落葉樹林下を住みかとし、春早くまだ木々が芽吹く前に展葉・開花を済ませ、木々の葉が萌えてくる頃に結実に向かい、すっかり新緑に覆われるころには種子を実らせ、葉を枯らして休眠してしまう特徴があります。
御質問の内容から判断して、球根は3球ではないかと思われます。
そして、各球根から1枚の葉が出ているものと推測しました。
このような状態ではカタクリは開花しません。
開花する場合は、1株から2枚(稀に3枚)の葉を展開し、その中心からただ1本の花茎を立ち上げてきます。
3月26日現在 蕾が見られないのであれば、本年のお花見はあきらめましょう。
さて、カタクリを鉢栽培するためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。
1 ライフサイクルを知る
夏は休眠し、9月過ぎ頃から地中で活動を開始します。
夏の水やりを絶対忘れないで。
2 ドロップアウトする性質がある
カタクリは毎年新しい球根を形成します。
その際、球根は下へ下へと潜り込む性質が強く現れます。
3 樹林下に自生しているが、直射光が必要
展葉・開花期はまだ木々の葉はほとんど開いていない。
マンションのベランダで栽培する具体的な方法
一般に、マンションでは日当たりと通風が良いと思われますので、それを前提とした栽培方法を提案します。
鉢は大きめの深鉢(乾きにくいもの)とし、砂に腐葉土等の有機質を混合した培養土を用いる。
肥培しないと花が着かないので、元肥を入れ、10月初めから薄目の液肥を週1度与える。
植え替えは9月中旬頃に必ず行い、その際全ての培養土を交換して球根を鉢の中心に植え込む。
植え替え後直ちに灌水し、絶対に乾かさない。その後も乾燥させないように適宜灌水を行う。
鉢は直射日光に当てず、温度変化の少ない状態を保つ。
冬季は霜除けをして、乾燥した寒風に当てない。
地表に芽が出てきたら 直射日光に十分当てる。
ここでカタクリ教(狂?)のおまじないをしましょう。
教祖様(カタクリ)は甘いものが大好きです。
葉が開いている期間は聖水(1〜3%の砂糖水)を週1回液肥とともにあげましょう。
冗談だと思って試してみましょう。
とにかく葉のある間が勝負です。葉を虫に食べられたりしないよう十分注意してください。
葉が流れる(黄変する)までは よく日に当ててください。
そして 落葉後はできるだけ涼しい日陰に移しましょう。ひからびさせないようにしてください。
カタクリの増殖
カタクリは実生以外で増殖させることはできません。
花が咲いたら他の株の花粉をつけて交配しましょう。
春の盛りを過ぎると緑色の鞘が黄色味を帯びてきて、やがて 頂部が裂けて種子がこぼれます。
鞘が黄変したら 摘み取って乾燥させて採種しましょう。そして種子は採り播きとします。
播種は深鉢に細かめの培養土を入れて、ばらまきした後、深さ1p程度に覆土して行います。
播種後は絶対に乾燥させないように灌水を続けると、翌年の早春に糸のような子葉をただ1枚展開してきます。
一生懸命肥培してください。
その後順調に栽培を続けると9年前後で開花株になります。
毎年種まきを続ければ、10年後からは毎年カタクリの花が見られますよね。
そんなわけですから、皆さん、自生地のカタクリを抜き取らないでくださいね。
球根が増えるわけではなく、苦節9年前後の歳月をかけて種子から生き残った幸運な個体がやっと日の目を見ているのですから。
みなさん いかがですか? 栽培できる気がしてきましたか?
種子から育てて咲かせている方も結構おりますので チャレンジしてみてくださいませ。
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