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質問63:ヤマユリの実生法について教えてください。


ヤマユリ Lilium auratum は近畿地方以北の本州に分布するユリ科多年草で、6月〜8月にかけて白色に黄筋の入った大花を開きます。

実生の具体的な方法は以下のとおりです。

1 基本的な性質
 ヤマユリは秋に果実が成熟し、乾燥して裂開すると大量の紙のように薄い種子を風により散布します。
 種子は地上に落下後、運良く条件のよい状態に保たれると翌年発芽します。

 しかしながら、子葉を展開せず、地中に極小さな球根を形成するだけです。
 地上への展葉は、種子散布2年後の春になり、小さな本葉を1枚開きます。

 その後の生育は運任せですが、数年かけて開花に至るわけです。

2 まず結実させましょう。
 播く種子がなければ話になりませんので、親株が開花したら結実させる必要があります。
 ヤマユリは自家受精しませんので、他の株の雄しべを採ってきて雌しべに花粉をつけます。

 この際、開花後しばらくして雌しべが湿ってきた頃に授粉すると確実でしょう。
 うまく受精すると果実がふくらんできます。

 確実に採種したい場合には、果実に袋をかけて種子を加害する昆虫から保護する必要があります。
 順調にいけば秋遅く果実が黄色く色付いてきますので、早めに手でもぎ取って室内で乾燥させます。

 果実は乾燥すると裂開しますので種子を取り出してください。

3 播種しましょう
 採種後直ちに播種します。
 一般的な山野草の用土に播種して1p程度覆土しましょう。

 播種後はたっぷりと灌水し、以後は絶対に水切れさせないように管理してください。
 うまくいくと、2年後には地上部にほんとにかわいらしい本葉をぴょろりんと展開してきます。

4 展葉後の幼苗の管理
 展葉後の幼苗はナメクジ、カタツムリ、蛾やバッタなどの幼虫に食害されやすく、立ち枯れ病などの病気も発生しやすいものです。
 常に見回りをして害虫等の捕殺や防除に心がけてください。
 
 適切な肥培管理が必要です。
 通常の5〜10倍に薄めた液肥を灌水代わりに与えましょう。
 その際、2〜3%程度の砂糖を加えると効果が高まるでしょう。
 
 次の年には移植が必要です。
 休眠期に移植すると小さな球根を見落としてしまうことが多いので、展葉後に葉が固まった段階で同じ用土の中深鉢に移植するとよいでしょう。 折れやすいので慎重な取り扱いが必要です。

 以後は休眠期に移植を繰り返していけば、数年後には数百?株のヤマユリの園が現出されることになります。 
 ユリは茎から出る上根が大切です。 大きめの深鉢で深く植えて栽培することが上手に作るコツです。