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質問8:日本が誇る山野草で、環境破壊や乱獲などで絶滅した種はありますか? 
        もしくは、絶滅しかかっているものはありますか?
       1999年4月2日受付
日本では、多くの山野草が絶滅に瀕しています。
山野草が危機にさらされる主な原因は、以下のとおりです。
1 開発行為による自生地の破壊 2 悪徳山野草業者による盗掘 フラボンが好きなテンナンショウ属(Arisaemaではユキモチソウ(Arisaema sikokianaが絶滅危急種に指定されています。
本種は近畿・四国に自生がありますが、いわゆる「不法な山採り業者」による乱獲により激減しています。
ユキモチソウは欧米各国の園芸愛好家には垂涎の的で、数年前の北米ロックガーデン協会(NARGS)の種子交換における種子の希望数がトップとなりました。
海外では盛んに種子による増殖が図られており、今後は園芸化の道をたどると思われイチョウ的存在となるかもしれません。
また、マイヅルテンナンショウ(Arisaema heterophyllumも危急種に指定されております。
本種は本州・四国・九州に点々と分布していましたが、多くの地点で絶滅してしまいました。
自生環境が湿った草地や林縁のある河川敷などであるために、河川改修や宅地開発などで消滅しつつあります。
そのほか、多くのラン科植物も絶滅が心配されています。
エビネ(Calanthe discolorは比較的身近に見られる野生ランでしたが、最近激減しました。
これも宅地開発で自生地が消滅しつつあること、かつての投機的ブームにより悪徳業者が大量に乱獲したことが主な原因です。
そのほか多くの山野草が絶滅に瀕しておりますが、とても取り上げ切れません。
興味のある方は、レッドデータブックをご覧ください。
レッドデータブック 日本の絶滅危惧植物 日本植物分類学会編 農村文化社 tel 03-3293-2171 山野草の絶滅を防止するためにはどうしたらよいでしょうか。
まず、無秩序な開発行為などの環境破壊を止めることが必要でしょう。
また、我々人間との共存が必要なカタクリなどの雑木林の植物たちには、「下草刈り」の復活を提唱します。
薪炭林の整備をすすめれば、再び身近な山野草が復活するでしょう。
次に必要なことは、山野草を栽培する人たちの意識革命です。
山野草先進国の欧米では、種子を播いて育てることが当たり前のようになっています。
しかし、日本では山野草園芸の歴史が浅いためか、明らかに盗掘されたであろうと推測された山野草が山野草専門店はおろか、身近のホームセンターのようなところにも出回っている始末です。
今後は「山野草は実生から」栽培することを提唱します。
また、積極的な園芸化を図る必要もあるでしょう。
山野草の育種を進め、積極的に優れた品種を作出し、山採り頼らない山野草園芸を確立すべきです。
無菌培養技術や実生により大量に優れた個体を作り市販されるようになり、価格も大幅に低下しました。
そのためか、山採りの圧力は一部下がりつつあるようです。
このような傾向が山野草全体に広がり、実生栽培中心になれば 種の絶滅の回避と、多様性の維持
貢献できるものと確信しています。
東京山草会では会員間、愛好団体間で種子交換を行っています。
絶対に自生地を荒らさないでくださいね。